自転車に乗って病院へ
すると、心筋梗塞の初期にも、この程度のボンヤリした症状が出るらしいとわかりました。そこから慌てて近所の循環器科病院を検索し、一駅くらい先に朝7時半からやっているクリニックを見つけます。その時もまだ夫は立ち歩いたりできていたので、まずは娘を学校に送り出し、2人で自転車に乗って病院に向かいました。
なぜ病院に行くのに自転車で、と思われそうですが、夫は出発直前はタクシーに乗らなければならないほど悪くなかったのです。でも自転車を漕ぐうちに今までにないほど苦しくなったそうで、病院に着いた頃には相当しんどそうに見えました。
私が病院の受付に飛び込み「心筋梗塞の可能性があるので心電図をとってください」とお願いしたところ、急性心筋梗塞を起こしていることが判明しました。院長が心電図の波形を見て「これは急を要します!」とおっしゃって、病院に救急車を呼んでくださり、そのまま総合病院へ。
自転車で行ったことも結果的に功を奏したようで(笑)。心筋梗塞の初期だと、心電図の波形の乱れが現れないことも多いそうなのですが、夫のはみごとにぐちゃぐちゃだったので、即座に診断していただくことができたのです。
到着後すぐに、5時間にも及ぶ緊急手術が始められました。詰まっている血管の流れを開通させ、そこにステントと呼ばれる筒状の金属製の網を置いてくる「冠動脈形成術」と呼ばれるカテーテル手術です。夫は病変の形状的に難易度が高く、かなり時間がかかりましたが、通常は2時間から長くても3時間程度で終わることが多いそうです。
執刀医の方には「当直にいつも心臓の手術ができる医師がいるわけじゃありませんから、僕が8時前にいて良かったですね。それに、あと1時間到着が遅かったら亡くなっていた可能性高いですよ」と言われました。
その後は、2週間入院。幸いなことに、予後は降圧剤を飲む生活が始まったものの、後遺症もなく以前の生活に戻っています。