遠慮せず、迷わず病院へ

夫の血圧はずいぶん前から上は200、下が170もあったせいで、高血圧の人特有のひどい頭痛持ちでもありました。でも、カッとしない性格と穏やかな生活のおかげで、脳の血管も心臓もこれまで持ち堪えてきたのかもしれません。そんな夫も54歳。いつ何があってもおかしくない年齢です。

コロナのことがあって、気軽に病院に行くことが憚られる世の中になってしまいました。一方で、心筋梗塞のように一刻を争う病気があります。私たちの場合は、たまたま循環器のクリニックが近くにあったことや、医療関係の方に迅速に対応していただいたことなど、いくつかの幸運が重なりました。

そして、夫の弱点が心臓だと私が知っていたこと。どれか一つのピースがなくても夫は命を落としていたかもしれません。日常から自分や家族の弱点を知っておいて、何か不安な予兆があったら自己判断は禁物。遠慮せず、迷わず病院を受診することを、今回の経験からお勧めしたいと思います。

 

胸痛ではないから心臓ではない、とは限らない
叶井さんの手術を担当した、東京医療センター循環器内科 西村崇文先生


心筋梗塞というと「胸痛」を思い浮かべることが多いと思いますが、胸痛以外の症状を訴える方もいます。今回のケースのように「悪心・嘔気」をはじめ、「みぞおちの痛み」「肩の痛み」「歯の痛み」「失神」「呼吸苦」「めまい」などです。特に高齢の方は、さまざまな主訴を示す患者さんがたくさんいらっしゃいます。胸痛ではないから心臓ではない、と思い込まないようにしましょう。

心筋梗塞は発症から治療まで時間がかかればかかるほど、治療しても予後が悪化すると言われています。上記の症状を突然自覚した場合は、我慢せずに救急車を呼ぶことが大切です。

また、突然の発症ではなく、階段や坂道などで徐々に息切れ・胸痛を自覚するようになる、いわゆる「労作性狭心症」の症状から始まる方もいます。緊急性はありませんが、内科クリニックでもよいので受診・相談するようにしましょう。

心筋梗塞、狭心症は高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などが原因となって起こります。まずは発症することを防ぐ「一次予防」が重要ですので、健康診断をしっかり受け、このような病気を指摘された方は医療機関を受診し、介入・治療を受けるようにしてください。