撮影=本社写真部 
漫画家の倉田真由美さんと叶井俊太郎さんは結婚11年目。2020年の夏、叶井さんは自宅で早朝気分が悪くなり、倉田さんは夫の既往歴から「もしや」と心臓の病を疑いました。迅速な判断で循環器系のクリニックに駆け込み、「心筋梗塞の疑い」と診断されたことで、一命をとりとめることができたそうです。私たちが思い込んでしまっている心筋梗塞のイメージとの違いや、その時去来した「夫の死を受け入れる覚悟」についてお話を伺います。(構成=岡宗真由子 撮影=本社写真部 写真提供=倉田さん)

みぞおちの辺りが気持ち悪い

夫は生まれつきガッチリしているというだけで、運動は一切しないタイプ。それに加えて、彼ほどお菓子を食べる大人を見たことがないです。私の作った家庭料理も食べますが、食後にお酒、ではなく食後にはお菓子。柿の種から、クッキー系…中でも好きなのが、子どもしか食べないような「たべっ子どうぶつ」。幸い、大病はしていませんでしたが、会社の健康診断ではいつもコレステロール値が高く、高血圧で、心臓が肥大化していると指摘されていました。

2020年の夏、平日の朝のこと。娘に朝食を作ろうとリビングに行くと、いつも早起きしている夫の姿がない。夫はお酒を飲まないこともあって、寝坊というものをしたことがないので「父ちゃんは?」と娘に尋ねました。「まだ寝てる」と言われて違和感を感じ、彼の寝室に行ってみると「みぞおちの辺りが気持ちが悪いんだよね。コロナかな?」と不調の様子です。

聞くと朝の5時から気分が悪かったそうで「会社に行く前に9時からやっているいつもの病院に行ってみるわ」と言うので、「会社に行く元気はあるんだな」と思ったことを覚えています。昨晩の夕飯のメニューを思い返しても、食中毒の可能性はなさそう。コロナでもそんな症状も聞いたことがない。

私は夫の健康診断の結果をチェックしていて、心臓肥大があることを知っていたので、「もしや、心臓に何かあるんじゃないか?」と考えました。いやでも、心臓に何か起こったら、もっと激烈な症状が出るだろうから違うのかな、とも…。とはいえこんな様子の夫を見たことがなかったので、ネットで夫の症状と「心臓」を掛け合わせて検索してみることにしたんです。