越路吹雪さんとの思い出

清水 でも、宝塚のトップスターとして舞台で脚光を浴びてきたわけでしょう。ときどき歌ったり、踊ったりしたくならない?

天海 それはまったくない。宝塚出身でも、得意不得意はあるんですよ。当時から歌やダンスよりお芝居をするほうが好きだったから、いまの仕事がちょうど合ってる気がしますね。ただ、実は今回、氷川きよしくんのプロモーションビデオでバックダンサーをしていて。

清水 お2人が共演した映画の主題歌が、氷川くんなんだっけ。

天海 昔踊っておいてよかったって思った(笑)。しかも映画のなかで、草笛さんと一緒に歌も歌わせていただいたんですよ。越路吹雪さんの「ラストダンスは私に」。

草笛 私、ずいぶん拒んだのよ。歌はイヤだ、イヤだって。(笑)

清水 どうして?

草笛 2人とも歌劇出身なうえに越路さんの歌だから、なんだか歌劇の続きみたいな気がして。私にはムリだと思った。

清水 越路さんと草笛さんは仲がよかったんですか。

草笛 コーちゃんが亡くなる1週間前、街で偶然に会って「まあ、しばらく」って手をとったのよ。そうしたら、手が熱いの。病院から外出していらしたのね。でも「買い物がしたい」と言われて、「今日一日は越路さんに捧げよう」とあちこち見て回って。「(岩谷)時子さんにカードをつくってもらったから、なにか買ってあげる」ってブレスレットを買ってくれたの。

天海 すでに、かなり体調が悪かったでしょうね。

草笛 「このブレスレット見たら私を思い出して」なんて言うから、泣きそうだった。「いつも思ってるわよ」って言ったのに、「いいのよ。見たら思い出して」って何度も何度も。その1週間後に亡くなったの。もう私、泣いて泣いてね。

天海 越路さんはご両親の命を奪ったがんになることを、とても恐れていたそうですね。でもご自身もがんで亡くなってしまった。

清水 天海さん、詳しいんだね。

天海 私、ドラマで越路さんをやらせていただいたことがあるんですよ。