「自分の子だから何を言ってもいいと……」

吉永 親子でもう一つ厄介なのは、近しい関係だからこそ「何でもわかってくれる、何を言っても許してもらえる」と、特に親の側が思い込んでしまうことでしょう。

桜木 私の場合、幼い時から母が漏らす周囲の人に対する不満を、ゴミバケツのようにため込んできました。27歳で長男を産んだ時も、お乳をやっている隣で相変わらずグチグチ言うの。孫もいるんだからと、父にひとこと言ったら今度は、父が母を「娘に何を吹き込んでるんだ」と怒鳴ったんです。「だって自分の子だから何を言ってもいいと思って」とモジモジしながら弁明した母の姿が今も忘れられません。

吉永 私が母に言われていちばん強烈だったのは、別れた夫(騎手の故・吉永正人さん)との間にできた最初の子を流産した時。彼の連れ子が3人いる結婚に最初から大反対だった母は、何かというと「向こうの家族のほうが大事なんだろう」とグチるから、その日も無理して車を運転して母に会いに行っていたんです。

その無理がたたって流産したのに、病院の枕元まで押しかけて、「あんたは私の本当の孫を殺した!」って怒鳴り散らした。普通なら娘がかわいそうとか、自分も悪かったとか言うものでしょう。

桜木 小説だったら、それは意地悪なお義母さんのセリフですよ。

吉永 そんな母を反面教師にしようと思っていたのに、実は私も同じような失敗をしています。夫の連れ子3人とは、どこか「私たち、根底ではわかり合えないですよね」という礼儀正しい距離を保っていたと思います。ところが、その後に生まれた実子に対しては、「言わなくてもわかるだろう」と無意識に甘えてしまった。

桜木 ああ、母も私に甘えていたのかも。