「親に《毒》とか《鬼》とかつける風潮は、そろそろ終わりにしてもいいと思うんです。」(桜木さん)/「家族もバクチと考えればいいんですよ。誰でも勝ちたいと思うけれど、『勝たなきゃいけない』と思うとうまくいかない」(吉永さん)

家族はバクチと考えればいい

桜木 お子さんたちは、どういう反応だったのですか。

吉永 それ以前から私は仕事場のマンションに通っていたから、「あまり変化はなかった」と義理の娘たちは言いますね。今でもちょくちょく連絡が来て、「具合が悪くなったら面倒みるからね」と言ってくれるのだけど、「1年くらいで死ぬと思ったら10年以上長引いちゃって、『引き受けるんじゃなかった』と後悔するかもよ」と脅かすとみんな黙っちゃう。

桜木 そんな意地悪言わないで、せっかくの厚意は受け取っておきましょうよ。(笑)

吉永 私自身が親で苦労してきたし、世間からみればいびつな家族の中で育ててしまったから、子どもたちは親から早く解放してあげたいと思った。子どもたちには、親のことなど気にしないで生きていってほしいだけなんです。

桜木 小説として想像するに、お子さんたちはむしろ「自由に生きろ」と言われることが重荷なのかも、と思いました。「面倒みてね」と頼られたほうが、いろいろ対処法も考えられるだろうし。

吉永 普段、私からは連絡もしないもの。向こうは私がレギュラーで出ている番組をチェックして、「休んでいたけど具合悪いの?」なんて電話をかけてくるんですよ。

桜木 いい家族じゃないですか。ちょうどいい距離なのかも。

吉永 家族って、追えば逃げる、逃げられると追いたくなるものなんですかね。義理の子どもたちに対しては、深い縁があって20年近く親子として過ごしたし、その時間は100%肯定できる。

子どもたちが困った時は全力で助けるつもりだけれど、それは私が母だからじゃなくて、とても深い縁のあった大好きな人たちだから。七面倒くさいけれど、それが偽らざる気持ちです。お互いに妙な甘えを生むのは、嫌なんですよ。