「半分は、『しまった!』と思いました。というのも小さい頃から私の望みは、母より一日でも早く死ぬことだったからです」(吉永さん)

母の死で、家族のバランスが崩れた

桜木 この先親が死んだ時、私はどう思うだろうと考えることがあるのですが、吉永さんはその時、何をお感じになりましたか。

吉永 半分は、「しまった!」と思いました。というのも小さい頃から私の望みは、母より一日でも早く死ぬことだったからです。

桜木 一日でも長生きしたい、ではなくて?

吉永 当時からよく見た夢で、私は棺桶に横たわって蓋から母が覗き込むのを待っているんです。つまり、これだけ頑張っても認められない私が死んでしまった人生を「思い知れ」ってことなのね。

桜木 業が深いよ……。

吉永 それだけ悪戦苦闘してきた42年間でしたから、半分は「すっきり!」ですよ。これで私は母の機嫌を気にしないで、自分の家族に向き合えると思った。ところが――ですよ。

それだけ重い荷物を急に下ろすと、バランスがいろいろと崩れてしまうのね。末の息子の問題もそうだけど、家族との間もぎくしゃくしてきて。最終的に、「家族をやめてみましょう」という結論になりました。