酒井 それも別の意味で、ちょっと怖いですが(笑)。私の両親はすでに他界しており、兄も病気で亡くなりました。同居するパートナーはいますが、婚姻関係を結んでいませんし、子どももいません。家族のいない私にとって、老後の一番の心配は、兄の遺したひとり娘に面倒をかけるのではないかということです。
樋口 姪御さんに財産を遺す準備をして、後を託すのがいいかもしれませんね。
酒井 私にできるのは、そのくらいかと思っています。
樋口 私が55歳の頃に「人生100年時代」なんて言葉はもちろんなく、老いればやがて死ぬと思うだけで、《老後》のことなんてまったく考えていませんでした。2000年に介護保険制度がスタートしましたが、その10年くらい前から仲間たちと制度実現に向けて運動を続けていたので、忙しい盛り。
専業主婦はもちろん、仕事を持つ女性たちが、働き盛りの時期を親や舅・姑の介護のために離職する姿をたくさん見て、国民がみんなで支え合う介護制度を、とそれこそ人生を懸けて闘っていました。
「ヨタヘロ期」に起きる変化とは
酒井 樋口さんは、高齢で体力が衰え、生活に支障をきたし始めてヨタヨタ、ヘロヘロする時期を「ヨタヘロ期」と名づけておられて。いずれ自分にもヨタヘロ期がやってくるのかと、わが身に重ねました。実は最近、大人になって初めて転んだんです。雨上がりにスニーカーで歩いていたら、つるっと滑って見事に横転。ヨタヘロの前兆かもしれません。
樋口 でも、55歳ならすぐ立ち上がれましたでしょう?
酒井 はい。恥ずかしくてすぐに立ち上がりました。