「転んだ時に限らず、困った時や不安な時は『助けて』と声を上げましょうと書かれていて、なるほどと思いました。」(酒井さん)

樋口 私は年に何度も転びます。去年の夏も、雨の日に滑ってひっくり返り、水たまりにボチャン。自力で起き上がれないので、歩いてきた女子大生らしき人に「すみませ~ん、悪いけど手を貸してください」とお願いしました。

酒井 迷惑をかけたら悪いし恥ずかしいし、と私はなかなか助けを求められません。

樋口 そう思うのが55歳。「助けて~」と叫ぶのが85歳。(笑)

酒井 転んだ時に限らず、困った時や不安な時は「助けて」と声を上げましょうと書かれていて、なるほどと思いました。年齢とともに、できないことは増えていきますものね。

樋口 日本人の寿命は延びたけれど、健康寿命とは一致していません。非健康期間は男性で平均9年、女性は12年です。私も数字では知っていたけれど、自分がそうなるとは想像していませんでした。

 

80代になって家の建て替えをしたのがこたえた

酒井 いつ頃から、ヨタヘロを実感されたんですか?

樋口 大きな病気でもしない限り、70代は皆さん元気です。私自身そうでした。でも77歳の時に大動脈に瘤ができ、破裂寸前で手術をして──。手術跡が、とにかく痛い(笑)。

当時うちにいた、たぬきという名の高齢猫が枕元に来たので、「たぬき~、助けてくれ~。オカータン、痛くて死にそうだよ」と言ったら、私の両手をむんずと押さえて手の甲を10分ほど舐めてくれて。思わず「おまえが死ぬまで、オカータン、生きていますからね。高齢どうし仲良くしようね」と言いました。

酒井 たぬき、優しい~! 支え合っていますね。

樋口 ただ、その時は痛みが消えると気力も蘇ったんです。ところがその後、80代になって家の建て替えをしたのがこたえました。40代で家を建てた時には、将来、老朽化してお金がかかることは念頭になかった。ところが70代末から雨漏りするようになり、蔵書が多いので床がたわみ、いつ床を踏み抜くかヒヤヒヤ。土石流ならぬ書籍流で死ぬんじゃないか、と。

酒井 書籍流! 他人事じゃありません。実は私も40歳で家を建て、本の重みですでに過積載。80歳の時に築40年を迎えます。

樋口 あら、大変! 家はこれから徐々にお金がかかるようになって、酒井さんより先に家の寿命が尽きると思いますよ。

酒井 今から対策なり方針を考えておいたほうがよさそうですね。