いつまでも変わらない娘を見て見ぬふり
「やれやれと思ったのも束の間、職場の人間関係に耐えられないと1年で退職。ニート生活をしていたころ、娘は結婚したんです。その出会いが、橋の上から川に身を投げようとしていたところを助けてくれたのだとか。私にはとても理解できません」
「結婚式はどうするの?」などと言おうものなら怒り狂うので、ただただ黙って見守るのみだったという。
「その夫が面倒見がよくて優しいので助かっています。子どもの世話をよくする子煩悩なパパで」
社会生活に不安を抱える娘が心配で、ヨリコさんは困ったときには駆けつけられるようにしておきたいと思っている。感情の起伏が激しい娘に孫が振り回されていないかと心配なのだ。
「先日、娘の夫が長期出張していると聞いて、気晴らしさせてやろうと、娘と孫をドライブに誘ったんです。孫は大喜びでしたけど、娘は車の中でラジオのニュースに反応して機嫌が悪くなり、悪口雑言をわめき散らした。あまりにひどいので『ちょっと静かにしてよ』と言ったら、もうたいへん。『二度としゃべらないわよ!』『私なんてどうせ死ねばいいんでしょ!』なんて言いだす始末。孫の前でもこれだから、ああ、変わらないなあと、がっくり」
大人になれば、結婚すれば、子どもができれば──とその都度期待もしたが、娘が変わることはなかった。これからも娘の地雷を踏まないように見て見ぬふりをしながらそばにいるしかないか、と諦め気分のヨリコさんだ。