大人になれば親子の距離感は変わるもの。かつての守り守られる関係は、親の老いとともにどのようなパワーバランスの変化を見せるのでしょうか。今回は離婚しながら二人の子を育てた64歳のヨリコさんと、感情の起伏が激しい40歳の娘ハルナさんのお話。結婚しても、子どもができても、ハルナさんの気質には変化が見られなかったそうでーー。
娘を守りたい一心で
ヨリコさん(64歳・仮名=以下同)の娘のハルナさん(40歳)は、夫と小学生の娘の3人暮らし。事実婚のヨリコさん夫婦とはスープの冷めない距離に暮らしている。
「娘の様子がわかるよう、近くに住んでいるんです。孫がいつでも遊びに来られるようにしておかないと心配なので」
ヨリコさんがハルナさんの父親と離婚したのは、ハルナさんが10歳、弟が7歳のとき。娘にさえ手を上げるような夫だったから、離婚は子どもを守るためでもあった。ヨリコさんは、これからは私一人でこの子たちを育ててみせる! と気負ってもいた。
仕事に子育てに孤軍奮闘していたヨリコさんだったが、ハルナさんが中学生になったころ学校でいじめにあっていると聞かされた。
「だんだん学校に行きたがらなくなって。事実がわかると怒りのあまり学校に乗り込んで、いじめた子を転校させるよう担任に直談判したこともありました」
持ち前の正義感と娘を守りたい一心での行動だった。娘には、「負け犬になっちゃダメ。いやなことはいやと言わなくちゃ」と教えたかったのだ。