落語以外の世界で名をなした方々から吸収して

父が創設した落語立川流にも、作家さんがたくさんいらっしゃいました。「顧問」には、手塚治虫さん、色川武大さん、石原慎太郎さん、川内康範さん、小室直樹さん。それから、プロの落語家を目指す人のためのAコースに対して、Bコースがいわゆる著名人枠。ビートたけしさんのような芸人さんから、野坂昭如さん、景山民夫さん、高田文夫さんのような作家さんが集まってくださった。落語以外の世界で名をなしたBコースの皆さんからは、談志も影響を受けたいと思っていたはずで、いろんなことを吸収したと思います。

30代から晩年まで、立川談志が語り合った作家との対談を収録した『作家と家元』(立川談志・著、中公文庫)

立川流の外では、心理学者の岸田秀さんとお話するのを楽しみにしていた頃もありました。家にもよく岸田さんの本がありました。

晩年は、伊集院静さんや福田和也さんとよくお話させていただきました。50代くらいまでは田辺さんや色川さんのような方を「人生の師匠」と慕ってきたわけですが、年をとってからは自分がご隠居の立場になってしまい、自分で自分をよりどころにするしかなかった。最後までいろいろ考え、悩んでいる人でしたから、頼れる「師匠」がいないのは、少し辛かったのではないでしょうか。 

福田さんにはそんな時期に、よくお世話になりました。2011年3月6日が最後の高座で、その翌々日に「週刊現代」で福田さんと対談をやり、それが最後に外へ出た仕事になりました。私も同席していましたが、もう声が出なくなっていて、父の体調のことばかりが記憶に残っています。