「かんじゅく座」の公演で熱演する小春さん<中央>(写真提供:かんじゅく座)

昨年コロナ禍で退会したスポーツジムの代わりを探さないと、と思いつつ、なかなか腰が重たい今日この頃の私。「どうせ長続きしない」「お金がもったいない」など、頭の中は言い訳ばかりだ。年齢を重ねても気後れすることなく未知の世界にチャレンジしている人には、どんな背景や思いがあるのだろう。歳を重ねて「目覚めた」女性に話を聞いてみた。(取材・文:山田真理 撮影:本社写真部)

《小春さんの場合》おのれを捨てて演じる自分に驚いた

都内にある地域センターの集会所。「おはよー」「10月というのに暑いねえ」と声を掛け合いながら、大きな荷物を携えた男女が次々と集まってくる。彼らは、60歳以上限定のシニア劇団「かんじゅく座」のメンバー。10日後に予定されている公演に向けて、今日は通し稽古を行うのだという。

劇団主宰の鯨エマさんが点呼を取ったら、まずは準備運動。最高齢は80代という劇団員たちに配慮して動きはゆっくりめだが、入念なストレッチやスクワットなど運動負荷はそこそこ高そうだ。発声練習を兼ねて劇中歌を振り付きで歌い終えると、メンバーはそれぞれの衣装に着替え始める。

「私は同級生に恋する女子高生の役なので、今回の衣装は制服なんです」といたずらっぽく笑う小春さん(仮名)は、今年64歳。大学職員の仕事を定年退職したのをきっかけに入団したという。