親切なご夫婦が窓から食べ物を

吉行 牛乳とかチーズとかアボカドとか、栄養のありそうなものは食べてるわよ。ゴマの成分、イチョウ葉エキス、黒酢ニンニクの3種類のサプリもずっと飲んで、それなりに調子はいいから大丈夫。

冨士 ちゃんとお料理もしたほうがいいと思うけど──。といっても、私のほうが何倍も骨折しているから、どちらがいいかわからないわねえ。

吉行 あなたは料理が大好きだけど、後片づけが嫌い。私は片づけるのは得意だから、「料理を作ってくれたら、全部片づけて、掃除もしてあげる」って提案したけど、絶対いやだって断られた。(笑)

冨士 だって割に合わないじゃない。こっちは買い物して準備して作って、そっちはお皿洗うだけなんて。それに和子っぺって、何を出しても「わあ、おいしい!」って感想がないの。作りがいがない。

吉行 おいしいとは思っているんだけど、表現能力が乏しいのよね。言い方が地味なのかしら。あなたは痛みがあったとき、食事はどうしていたの?

冨士 お米を炊くのも一苦労だし、買い物にも行けないから食べるものがなくなるでしょう。サバの味噌煮缶とかをぼそぼそ食べて「私ってかわいそう」なんて思ってると、隣の家の親切なご夫婦が窓から食べ物をくださるの。(笑)

吉行 えっ? 窓から?

冨士 電話で「今日はぶり大根を煮たから、窓開けて」と知らせてくれてね。お互い一軒家で、2階の窓から受けとるのよ。90歳のご主人も、「イワシの天ぷらを揚げたよ」とか言ってね。

吉行 いいわね。都会じゃ珍しいお付き合い。

冨士 いいって言うけど、あなたは人からご飯なんて絶対にもらわないでしょう。

吉行 くれればもらうけど、感想が地味だから2度目はないと思う。

<後編につづく

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