一大スキャンダルがTBSを直撃

『筑紫哲也NEWS23』が始まってまだ2年が過ぎていない1991年7月のことだ。

50代のころの筑紫さん。当時の書斎にて。「中央公論」1992年8月号より

当時、日本はバブル経済が崩壊した直後で、経済界は大変な混乱に見舞われていた。バブルに浮かれていた金融業界(証券会社や銀行)の不祥事が次々に明るみに出て、企業の倫理が問われるような事件・醜聞が相次いだ。

大手証券会社の損失補填事件もそのような文脈の中で明るみになった事件だった。この年の6月にまず、最大手の野村證券の大口顧客への損失補填と暴力団関係者との多額の取引が発覚した。その後、4大証券会社も同様の大口顧客への損失補填を行っていたことがわかった。

バブル経済の牽引役とみなされた証券業界が社会的な非を一身に浴びるような事態に発展、リーダー企業の野村證券の会長と副会長は辞任した。まさか、この証券会社の一大スキャンダルにTBSが直撃されるとはこの時はほとんど誰も考えていなかった。TBSの田中和泉社長(当時)も含めて……。

だが7月29日に、日本経済新聞がスクープした大手証券会社の損失補填先リストのなかに何とTBSが含まれていたのである。