(イラスト:若林夏 写真撮影:本社写真部)
来る年には、公的年金制度の改正など、“アラウンド年金世代”にとって気になる話題が控えています。コロナによって滞った経済状況や雇用制度の改正により、私たちの家計はどのような影響を受けるのでしょうか(構成=山田真理 イラスト=若林夏)

<前編よりつづく

働きながら年金受給、「70歳受給開始」への布石

続いて、「在職中の年金受給についての見直し」。会社員の場合、現行では60~64歳の人が賃金と老齢厚生年金を受け取る場合、合計額が月28万円を超えると年金の一部が支給停止になる仕組みでした。これが改正後は47万円まで緩和されるため、年金をもらい始めてからも積極的に働きたいという人には嬉しい改正かもしれません。

また「厚生年金の適用範囲の拡大」として、パートなど短期労働者を社会保険に加入させる義務のある事業所の条件が、従業員数101人以上になるという変更も年金制度改革には含まれます。

働き方については、21年4月から、「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。これは従業員が希望すれば70歳まで働けるよう、定年年齢の引き上げや定年を廃止するなどの努力義務を企業に求めるものです。

働けるうちは働いて収入を得られるのは、確かにありがたいこと。しかし国はなぜ、そこまでして高齢者を働かせたいのでしょう。その背景にあるのは、ずばり年金問題。日本の公的年金は、現役で働く人が納めた保険料を現在の高齢者に支給する仕組みです。

以前に年金の支給年齢を60歳から65歳に引き上げたときも、国は「65歳まで働ける環境づくり」を同時に進めました。今回のさまざまな改正も、「年金の70歳支給開始」に向けた布石かもしれないという視点で、今後の行方を注視する必要があると思います。