おもしろがって生きていくしかない

とはいっても、ケーキ作りが好きなわけではありません。冷静に考えれば、ケーキで身を立てるなんて、まったくの想定外。ケーキを食べることは好きでも、生業にすることは次元が違う話です。

それでも、「やってみはったら!」と自分を励ます心の声が聞こえてきて。シナリオどおりに進まない人生もおもしろいですね。というより、もともと人生とは、シナリオどおりに進まないものなのだから、想定外の縁に添いながら、おもしろがって生きていくしかないと感じました。

私のケーキ修業の始まりです。押しかけるように弟子入りした3人の先生から、三者三様のレッスンを受けました。ローリー先生、プリューデンス先生、そして、3番目に出会ったシャロル先生からは9か月間の集中授業でアメリカンベーキングの基礎をみっちりと学びました。

私は決して器用なほうではないけれど、地道に繰り返すことで技術を身につけました。コツコツ続けていると、あるとき、できなかった技ができるようになっています。ずぶの素人からのスタートでしたが、9か月後はそれなりの達成感がありました。

授業はそこで終わりではなく、シャロル先生と出会って25年以上経ちますが、その間もずっと、新しいレシピや技術などの教えを受けていて、生涯ずっと学び続けるつもりです。その技術を今、生徒さんに伝えることが私の生業であり、小さな幸せです。

「上手に焼けました」「ここが難しかったです」といった反応を聞くのもワクワクしますし、生徒さんから学ぶこともあります。のべ1000人以上の生徒さんがいますが、その中でふたり、月1回のレッスンを皆勤賞 で通い続ける生徒さんがいます。かなり上達したふたりを見ていると、「継続は力なりという言葉はホンマやわ」と尊敬し、いい刺激を受けています。