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シンク・オア・スイム
ーイチかバチか俺たちの夢ー

監督/ジル・ルルーシュ 脚本・脚色/ジル・ルルーシュ、アメッド・アミディ、
ジュリアン・ランブロスキーニ
出演/マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ブノワ・ポールヴールド、
ジャン=ユーグ・アングラード、ヴィルジニー・エフィラ、レイラ・ベクティ、
マリナ・フォイス、フィリップ・カトリーヌほか
上映時間/2時間2分 フランス映画
■7月12日より新宿ピカデリーほかにて全国公開

ありのままの中年男性の姿を演じる名優たち

冴えない男たちがシンクロナイズド・スイミングに挑戦! と聞けば、男子高校生がシンクロに挑む妻夫木聡主演作『ウォーターボーイズ』(2001年)を思い起こすだろう。フランス映画『シンク・オア・スイム−イチかバチか俺たちの夢−』は、スウェーデンに実在する中年男性のチームをモデルにした群像劇。失業中の男たちがストリッパーになるイギリス映画『フル・モンティ』(1997年)にも通じる、笑いと感動に満ちた人間ドラマの傑作だ。

主人公のベルトランは、地元の公営プールで練習する男子シンクロナイズド・スイミングチームに、ふとした出来心で参加を決める。それはほぼ全員がぶよぶよのお腹をした中年男たちのチームだった……。

監督は、『セラヴィ!』『ナチス第三の男』(ともに17年)などに出演し、俳優としても活躍するジル・ルルーシュ。彼のもとに結集した俳優仲間は、フランスを代表する名優揃い。決して魅力的とはいえない体をさらけ出し、ありのままの中年男性の姿を演じる。

うつ病のため2年間も働いていない男ベルトランにマチュー・アマルリック。キレやすく老母との仲が険悪なロランにギョーム・カネ。いい加減な性格のため何度も会社を倒産させてきたマルキュスにブノワ・ポールヴールド。ミュージシャンになる夢を諦められず、娘からも愛想をつかされている長髪男シモンにジャン=ユーグ・アングラード。そして、ミュージシャンとしても著名なフィリップ・カトリーヌは、心優しいが恋愛下手で孤独な男ティエリーに扮する。

 

こうしたメンバーひとりひとりの私生活上の苦境が、丁寧に描写されていく。やりがいのない仕事、家族との関係……。そんなことに悩みながら、元シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌのもと練習に励んでいた彼らは、世界選手権の開催を知り、軽い気持ちでエントリー。だが、デルフィーヌはある出来事がきっかけで指導ができなくなってしまう。

代わりに現れた鬼コーチ、アマンダのもと猛烈な特訓が始まる。アマンダの、体罰も当たり前な厳しい指導に男たちは怯え、殺意さえ抱くが、演技はだんだんとサマになっていく。仕事中でも振り付けの練習に余念がない彼らの真剣にしてユニークな姿は、周防正行監督の名作『Shallweダンス?』(96年)の、社交ダンスに夢中な面々を思い起こさせる。

親子のすれ違いと和解などのドラマが描かれるなか、もっとも印象的なのは、2人の登場人物の優しさだ。ベルトランの妻はひきこもり続けた夫を明るく支えてきた。女性経験に乏しいティエリーは、傷心のデルフィーヌにさりげなく寄り添う。ダメ男たちの奮闘ぶりとともに、この2人の包容力が心に沁みる。

 

アマンダと僕

監督・脚本:ミカエル・アース
©2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA

パリでのんびりと暮らす青年ダヴィッドは、シングルマザーの姉とその娘アマンダと仲良し。恋もして、幸せに過ごしていたが、その穏やかな日常がとつぜん理不尽な形で断ち切られる。7歳のアマンダと悲しみを分かちあい乗り越えていく姿と、何気ないパリの風景が胸を打つ。シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開中

 

Girl/ガール

監督・脚本:ルーカス・ドン
©Menuet 2018

15歳の美少女ララは、念願かなってベルギー国内有数のバレエ学校に入学。実はララは男として生まれ、二次性徴を抑制する療法を受けていた。今は股間にテーピングをして、同級生たちに追いつくため必死に練習を重ねている。ララの、現在の性を受け入れられない思いの深さに衝撃を受ける。7月5日より新宿武蔵野館ほかにて全国公開