儲けたいという気持ちはゼロに近い

デビット ありがたかったよね。それで、3月13日になんとかオープンに漕ぎ着けた。夫婦二人でやっていくという思いから、店名は、本名の「伊藤」を使って「伊藤商店」に。結局、伊藤商店オープンと真鶴移住の資金として、さらに3000万円を借金しました。もはやマイナスからの再スタートだけど、不安はないな。

能子 うん。逆に蓄えがあるほうが、足りなかったらどうしようって考えちゃうから、かえって不安になるのかもね。うちはお互い腹を決めているし、不安がっている暇があったら働くしかない。(笑)

デビット あはは、そうかもしれないね。僕たちは儲けたいという気持ちはゼロに近い。そこを目標にしてしまうと、大きく外れたときに絶対うまくいかなくなるから。「でびっと」については、あと3年くらいで借金が完済できる計算で、その後はスタッフの誰かに店を譲り渡すつもり。僕たちがこの町でやっていくことについては、二人なら絶対なんとかなるし、借金も完済できる自信があります。

能子 伊藤商店のメニューは、ほかのラーメン店とは少し違うのよね。普通だったら、うちの基本スープはこれですよ、というものを決めるんだけど、うちは季節ごとにベースから何から全部変えています。

デビット 今回、今までの店の看板メニューやレシピは全部捨てちゃった。完全オリジナルのほうが必死に動けるかなと思って。春は軽めの豚そば、夏は鶏そばにして冷たいスープも出して、秋は豚鶏そば、そして冬は味噌系をつくりたいと思ってる。

能子 提供する側は大変だけど、「でびっと」時代も突然メインのスープを変えて従業員を動揺させる姿を見てきたし、どうせやるでしょう、と(笑)。それにこのあたりは飲食店が少ないから、「うちの味はコレです」とこだわるよりも、いろんなメニューを試してもらったほうがお客さんに喜ばれるしね。