地元の食材を使って開発した鶏そばとおでん

誰も僕を芸能人だと思っていない

デビット 能子さんの考えた、静岡のおでん出汁と神奈川の食材を使った「かなおかおでん」も人気。実際オープンさせて、いい意味で予想を超えてくれた気がするなあ。

能子 うん、町の人が常連さんになってくれた。オープン前にちょっとおしゃべりに立ち寄る人を、「いってらっしゃい」と送り出す。夕方になると常連さんが店に顔を出して、思い思いに過ごして帰っていく。そんなふうにうちを活用してくれているのがうれしいよね。

デビット そうだね。おじいちゃん、おばあちゃんが僕らの顔を見に店に来てくれたり、ご近所さんがみかんの差し入れをくれたり。いただき物ばかりで、僕ら何も買わなくなっちゃったもんね。僕は若くしてお笑いを始めちゃったし、子どものころは引っ越しが多くて地元という地元がないから、ご近所づき合いも初めて。ここへ来て、自分がずいぶん変わったなと思う。だって誰も僕を芸能人だと思っていないもの。

能子 あはは、それは言える。

デビット 能子さん、あなたも変わったよ。僕の趣味は「能子」だから、よくわかるんですよ。ここは故郷の焼津よりも、あなたの地元だね。あれ、姿が見えないなあと思うと、近所の家に上がり込んで、おばあちゃんの肩をもんでいるし(笑)。いや、本来はそういう人だと思うんだよ。でも、横浜にいるときは、人とそんなふうに関わることはなかった。

能子 芸能人のお嫁さんだったからなあ。デビさんもね、私の知っている〈伊藤努さん〉でいる時間が長くなったと思う。以前は、相手によって出すオーラが微妙に違ったりというのがあったけど、今はいつも普通。

デビット 今までは一歩外に出ると気を張っていなきゃいけなかったけど、それもなくなったな。