親の動揺は「大敵」

私の前に現れたAさんはげっそりとやせ、青白く、とても高校生の女の子には見えませんでした。

変わり果てたその姿もさることながら、ご両親の慌てぶりたるや、こちらが心配になるくらいでした。お母さんは、話をしているうちに泣き出してしまうほどです。

無理もありません。親にしてみれば、「朝、起きてこない」「めまいや立ちくらみがする」「朝ごはんも食べない」「それでいて夜は元気」そんな症状を、なかなか理解することはできないのです。

このように、起立性調節障害のはじまりというのは、親の動揺が顕著です。

無理もないことですが、まず、これを取り除かなければなりません。治療の第一歩は、親の動揺を鎮めることから始まる、と言ってもいいくらいです。

というのも、親の動揺は容易に子に伝わり、家族全員が冷静でいられなくなるからです。すると、親が子どもに心配を感情的にぶつけるようになります。それに反応して、子どもは心理的な影響から、起立性調節障害をさらに悪化させてしまいます。

起立性調節障害に向き合うという意味で、大敵なのが「親の動揺」(写真提供:写真AC)

決して親が動揺しない。このことが、起立性調節障害に立ち向かっていくにあたり、まず大事なことです。

ちなみに、Aさんの件は、本人とご両親に起立性調節障害について説明し、ご理解いただくことができました。昇圧剤と漢方薬、生活指導を徹底することにより、約半年で学校に行くことができるようになったのです。