思い立って引っ越した部屋では、植物を育てているという岡田さん(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本紙記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは70代の岡田茂子さんからのお便り。若い時は何をしたらいいのか悩んでいたという岡田さんですが、今ではやりたいことをたくさん抱えているそうでーー。

急に思い立って引っ越しを

一昨年の夏、急に思い立って10年住んだ学生用アパートから引っ越した。

家賃は2万円ほどアップしたが、部屋の間取りが理想的で、ここで生活意識を変えるのだと張り切った。クリエイティブな生き方がしたいと、家具を揃え、作品作りにも精を出し、今では部屋の壁全体が木のオブジェや粘土の小物、絵などで埋まっている。

新しいアパートはそれなりに日当たりがあり(よくはないが)、ずっと植物を育てることに憧れてきた私は、鉢植えの花や観葉植物を次々と集めた。半数以上は枯れていったが勢いを増すものもあって、木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」の木のように、なんとか心が通じないかと鉢植えに話しかけている。

60歳からデイサービスの仕事を始め、パート勤務だがますます面白くなってきた。利用者さんと一緒にパンケーキを作ったり、時には英会話レッスンを受け持ったり。何をするにも彼らの学びたい気持ちが伝わってきて、爽やかな感動がある。

はっきり言って、人に教えるほどの十分な知識は持ち合わせていない。彼らこそがありがたい〈私の教師〉であって、私に新鮮な探究心を与えてくれるのだ。