70歳を前に体力の衰えを感じて
僕は今、72歳ですが、3年前、ずっと70kg台前半だった体重が80kgまで増えてしまって。体は重いし、体力の衰えも感じました。
そこで、講演会でみなさんに推奨してきた「鎌田式ワイドスクワット」や「かかと落とし」を、これまでのように「ときどき」ではなく、毎日続けることにしたんです。
3年経った今は体重9kg減の71kg。太もも3cm、ヒップ3cm、ウエストは9cmほどサイズダウン。毎年スーツを仕立てていただいているテーラーさんに、「先生、サイズが変わりましたね。いいですよ」とほめていただきました。おなかまわりがスッキリすると、おしゃれも楽しくなります。
「運動」の効果は体重を減らすことだけではありません。筋肉の強化によりフレイルを予防できますし、血糖値を下げ、高血圧予防にもなります。
僕が実践している「スクワット」は下半身の大きな筋肉を鍛えます。鎌田式は背骨が曲がらないように動作し、足裏全体で床を踏みしめることと、膝を曲げたとき、膝がつま先より前に出ないことがポイント。筋肉が動くときに分泌される物質「マイオカイン」には、認知症のリスクを下げる働きがあることもわかっています。
あわせて行ってほしいのが「かかと落とし」です。まず、椅子の背などにつかまってつま先を上げてかかとで立つ。次につま先を下ろすと同時にかかとを上げ、最後にドスンとかかとを落とすというもの。
かかと立ちは鎌田式の特徴です。高齢者がわずかの段差でも転ぶのはつま先が上がっていないから。かかと立ちし、向こう脛の筋肉を強化することでつま先が上がりやすくなり、転倒予防になります。
つま先立ちでは、第二の心臓と言われるふくらはぎの筋肉が鍛えられ、全身の血流がよくなります。最後にかかとをドスンと衝撃を与えるように落とすことで、骨を作る骨芽細胞を刺激し、骨密度のアップが期待できます。
さらに、「速歩き」と「遅歩き」を交互に繰り返す「速遅歩き」もおすすめです。運動に慣れていない人でも取り組みやすく、効率よく脂肪を燃焼し、筋肉を強化できます。
僕は妻と一緒に、自宅から車で10分のところにある尖石遺跡まで出かけ、そこの原っぱで速遅歩きをしています。〈速歩き3分+遅歩き3分〉を2セット行い、最後に〈速歩き3分〉で終了、計15分。これだと無理なく続けられます。
ほかには、足踏みをしながらしりとりや計算をする、という運動もいいですよ。腿上げをしながら3の倍数で手を叩くなども。
この、頭と体を同時に働かせる運動を「コグニサイズ」と言います。これは、短期記憶を保持する脳の前頭前野の働き「ワーキングメモリ」を刺激する運動で、認知症予防になるだけでなく、判断力や適応力の強化にもがります。
「スクワット」「かかと落とし」、そして「コグニサイズ」も、道具は必要なく、いつでも、どこでもできるのがいいところ。僕は、テレビを観ながら、歯を磨きながらなど、「ながら」で、ちょっとした合間を見つけてやっています。大事なのは続けることなのです。
今は熱中症が心配な時期ですが、筋肉は水分の貯蔵庫。筋肉がないと体内で水分を保持できず、熱中症のリスクを高めます。この夏を乗り切るために、運動で筋肉強化をはかりたいものです。