大きさで寿命が決まる、ネズミ的死に方

つまり、ヒトとマウスの死に方は違うのです。

ネズミでも、中型や大型になってくると事情は違ってきます。まず寿命ですが、中型のハリネズミ(体長約20センチメートル)の寿命は約10年、大型のビーバー(体長約1メートル)は約20年生きます。体長が大きくなれば寿命も延びるというわけです。

これら大型ネズミが長寿になった原因は、もうおわかりのことと思いますが、独特の身を守る形態(ハリネズミの針のような毛)や生活環境の多様化(ビーバーの水上暮らし)により、他の生物から食べられにくくなり、長生きするほうがより子孫を多く残せたからです。長寿の性質(多様性)を持った種が多くの子孫を残し、徐々に寿命を延ばしていったわけです。

ハツカネズミ。生後わずか2ヵ月で成長・成熟し、20日間の妊娠期間で4〜5匹の赤ちゃんを出産する(写真提供:写真AC)

つまり、長寿になるための遺伝子が進化したと言えます。彼らの長寿化は、それを可能にした形態や生活様式の変化に支えられています。そのため、よりとがった毛やより大きなダムを作る能力も同時に進化しました。

そういう能力が高いものが生き残り、長寿を達成できたわけです。全ての性質に理由があるのです。こういうところも、生物学の面白いところです。

かくしてネズミの仲間は、「食べられる死に方」から「寿命を全うする死に方」に変化しました。ただ、他から捕食されなくても、老化して自分で餌が捕れなくなったら死んでしまうので、顕著に身体の能力が低下した老齢期のようなものはありません。ピンピンコロリな死に方です。