活劇スターの紅三十郎を演じる青柳さん

戦前の日本映画界を舞台にした青春物語

そんな青柳さんの舞台最新作は、1994年に劇団ラッパ屋で初演、このたびパルコ・プロデュースとしてリバイバルする『三十郎大活劇』。第二次世界大戦前の日本で、映画の黄金期を生きた若者たちの姿を描く青春物語だ。青柳さんは、大部屋役者から一夜にしてスターとなる紅三十郎を演じる。演出を担当するラサール石井さんには、「当時の銀幕スターの佇まいを演じてもらえたら」と言われたという。

「出演が決まってから、演技の参考にすべく昔の映画を何本も観ました。三船敏郎さんの『用心棒』『椿三十郎』、阪東妻三郎の『血煙高田の馬場』、大河内傳次郎の『丹下左膳余話 百万両の壺』……。どれもすごく面白いですし、カッコイイんですよ。殺陣も今みたいなきれいな型じゃなくて、小刻みに足でステップを踏んでいたり。おそらく武道から来た動きだと思うんですけどね。仕草ひとつにしても、あごひげをずーっと触っている、わざと口角を下げて喋る、いつも爪楊枝を持っているなど個性的で」

なかでも、青柳さんが特に気になった動作があったという。

「見栄を切るというのかな、首を動かすしぐさはものすごく気になりました。家で鏡を見ながら1時間くらいやってみたんですけど、どうしても上手くできなくて。なんかヘンな人みたいになっちゃうんですよ(笑)。もっといろんな作品を観て研究しないといけないなと思いました。僕は歌舞伎を1~2回しか観たことがないのですが、これはしっかり観ておかないとダメかな、と。通じるものがある気がして、歌舞伎を掘り下げるのも勉強になるのでは、と思っています」

今回、三船敏郎をはじめとする当時の役者陣の魅力を再認識したという青柳さん。具体的に、どのあたりに惹かれたのだろう?

「とにかく三船さんは、何をやってもカッコいいんですよ。落ち着いた佇まいで渋さがあって、殺陣も素晴らしい。当時の役者さんの殺陣は、今と違って後から編集で動きのスピードを変えることができない。それなのにあのスピードを出せるのだから、本当にすごいと思います。家で真剣を使ってロウソク斬りをしていたなんていう話も聞きますが、今やったら相当ヤバい奴になってしまう(笑)。そんな逸話が残っているところもいいですよね」