「完璧な姉」と比較される毎日から解放され
そもそも、私が歌手になりたいと思ったのは、まだ小学校に上がる前の話です。私には3つ年上の姉がいるんですけど、姉は可愛いし、勉強もできるし、走るのも早いし、バトントワリングでも1位になるしと、とにかくなんでもできる人なんですよ。
それに比べて、私は姉みたいに人当たりはよくないし、嫌なことがあればすぐに顔に出ちゃうし、自分のやりたいことしかやらないし、みたいな子どもで。姉と比べられては大人たちに顔をしかめられる毎日の中で、唯一、歌を歌っているときだけ、みんなが私を褒めてくれたんです。そのときに、「歌なら姉に勝てるかも」って。
もちろん、中学、高校と進学していく中で、CAさんや学校の先生になりたいと思ったこともありました。行きたい大学もあったので、推薦を受けられるようにそれなりに勉強もしていたんです。ただ、そのときにふと思ったのが、この先、大学に4年間通って、なんらかの職業についたとしても、きっとどこかの時点で「やっぱり、歌を歌いたかったな」と思うに違いない。だったら、大学に行くこと自体が無駄なような気がして。
それで、高校の進路相談のときに「私、大学受験はやめて、歌手になります」と言ったら、担任の先生に「バカじゃない?」と呆れられ(笑)。確かに、バカですよね。うちの両親にもそう言ったら、もちろん、むちゃくちゃ怒られて。プロの世界は甘くない。お前程度に歌える人なんて山ほどいるから、大学に行ってから歌手を目指しても遅くないと反対されました。
だけど、「私が家を出て4年間大学に通ったら、学費と生活費を合わせて1千万円以上もかかるでしょ。そのお金を私はすべて無駄にする自信があります。それでも払ってくれるんですか?」と言い返したら、「じゃあ好きにしなさい」と親も根負けして。それで、そのお金でニューヨークに行ったんです。
なぜ、ニューヨークに行ったのかと言えば、その当時の私の好きなものがすべてあった場所だったから。音楽も東海岸のクラブミュージックやジャズが好きだったし、洋服もニューヨークのブランドが好きだったので、ニューヨークに行きさえすればなんとかなるだろうという根拠のない自信がありました。