「美しさは、見た目じゃない。」と教えてくれた母(写真:講談社)

命を生む言葉と命を殺めてしまう言葉

お金もなかった私たち親子にはトリートメントも買えなかったので、いつも髪の毛が膨張してグチャグチャだった。

唇もカサカサ、みんなはリップを塗って、縮毛矯正(しゅくもうきょうせい)が流行っていたのに私はできなくて、周りから見た目もバカにされていた。それでも家に帰れば、友達との不調和は隠して、母の前では順風満帆の娘を演じきっていた。

そんなある晩、母がパンの生地を買ってきて、一緒に作ろうと誘ってくれた。私は無意識だったのでしょう、すごい表情でパンの生地を叩きつけていたらしい。

母が「どうしたの?」と聞くので「**ちゃんが嫌、いなくなればいい」と深くは話をせずに言いました。

そうしたら母が

「サヘル、今の自分の顔を見てごらん、醜いよ。人の悪口を言うその口も綺麗(きれい)じゃないし、人を憎んだり、悪いところを見てしまう目も綺麗じゃない。

いい? 美しさは、見た目じゃない。美しさを追い求めてもキリがないの。上にはいくらでも上がいる。そして外見の美しさしか備わっていない人は、10分以上見たら飽きるもの。

本当に美しい人は、一緒にいればいるほど、美しさが溢れ出すもの。人は中身なの。
何を読んで、何を見て、どんな言葉を発するかによって決まってくる。悪口を言う人は、そういう顔つきになる。目も口も誤魔化せない。

だからこそ、心を磨きなさい。相手を愛しなさい。同じフィールドには立たないこと。暴言を吐かれても、暴言で言い返さない。

殴られても、殴ってはいけない。同じことを繰り返したら、アナタもその人と同じレベルになってしまう。大切なことは、そのときは歯を食いしばって飲み込むこと。

相手がなんでこんなことをしてしまったのだろうかと、本人が後悔するまでの人にアナタはなりなさい」

そう教えてくれたんだ。

私たちは、つい、感情のままに行動してしまう。言葉の持つ脅威に気づかないことが多い。言葉は人を愛することも、包み込むこともできる反面人を傷つけ、罵ののしり合い、人を殺すこともできてしまう。

命を生む言葉と命を殺めてしまう言葉。

アナタはどんな言葉を日頃使っていますか?