「恋」より「片思い」の方がいい

「私はたくさんの恋をしてきた」というと、私を見た人は「ウッソー、あなたがそんなにモテるわけないでしょー」。

そう言われると「そーだよねー」と思いますが、あのときめきはいったい何だったのでしょう?

「恋」ではない私の一方的な「片思い」と言った方が正しいのかもしれません。
思えば、「小さな恋」を描き始めてもう60年とか。私はアレヨというまに81歳になりました。

が、どうも実感がありません。

鏡をみると、しっかりあちこちにシワやシミ、抜け毛……等々、
はっきりと老いのしるしが現れています。ひとすじの光となれり木の葉髪。

でも、マンガのアイデアを考えるとき、又17歳のまんまのチッチになりすまします。
チッチは60年もサリーを追っかけていて、私も60年もチッチを追いかけ続けています。
これはやっぱり、恋ではなく、永遠の片思いでしょうね。

(私は「恋」より「片思い」の方が長続きするし、ドキドキするのでは、と思っています)

『小さな恋のものがたり』の主人公チッチはサリーを追いかけながらも
あちこちで片思いを発見しています。

親友のトンコちゃんのことはもちろん、人に限らず、
道ばたのタンポポや空を行く雲や逃げてゆく野良猫や、白い靴の好きな蝶々や……。
生きているから次々とささやかな片思いを発見できるのです。

そしてその片思いが「みつはしちかこ」に、「まだまだ描いて」とエンピツを持たせるのです。