指導中の声は大きいが、子どもに怒鳴ったりきつい言葉を使ったりすることは決してない

中学時代、ソフトボールに出会って夢中に。「女が棒切れ振り回して何するんじゃ!」と父親に殴られても反発はせず、それまで通り家事をこなしながら、黙々と練習に励んだ。高校のソフトボール部の推薦で入った実業団チームで長一さんと知り合い、結婚。5人の子どもに恵まれた。

現在も暮らす団地に引っ越したのは、長男が小学3年生、次男が1年生、三男が幼稚園児の時。1970年代の団地には子どもの声が響き渡っていた。空き地でキャッチボールをする子どもたちに「おばちゃんとおっちゃんと一緒に野球をやれへんか?」と声をかけると、すぐに10人ほどが集まったという。

群れをつくって助け合うオオカミのようにという思いをこめて「リトルウルフ」と名付ける。50年の間に1200人の子どもが「社会で生きる力」を身につけて巣立っていった。

入部する時、子どもたちは安子さんといくつか約束を交わす。「ユニフォームは自分で洗濯をする」「自分が飲むお茶は自分で用意する」「帽子とかばんのお金は家の手伝いをして自分で稼ぐ」。基本は「自分のことは自分でする」だ。

ほかにも月に2回、子どもたちで団地内の新聞回収をして、年間活動費の3分の1(約60万円)を捻出する。一方で1、2年生の会費は月500円、3年生以上は1000円に抑え、ユニフォームは支給するなど家庭への負担はできるだけ抑える。