がんばらなくていいという選択肢

振り返ってみると、グレイヘアにしようと決断する前の私は、どこかで無理をしていたようにも思います。局アナの頃は、50歳になっても美しい先輩がいっぱいいたので、自分もそうなれるかもと思っていました。ところが20代で白髪が出るし、40代半ばで更年期の諸症状に悩まされるようになり、けっこうきつかった。それである時、「がんばりすぎていたのだ」と、気づいたのです。

何歳になっても若々しくあろうとがんばれる人は、それでいいと思います。“美魔女”も否定はしません。でも私は、しんどかった。そういう人には、がんばらなくていいという選択肢があるのだということを、皆さんにも気づいてほしいなと思います。

「母親が老けていると思われたら子どもがかわいそうだから、面倒だけど髪を染めなきゃ」という話もよく聞きます。子どもを持つ身としては、それもわからないではありません。でも、「私の生き方はこうなのよ」と胸を張っていれば、子どももまわりもついてくるのではないでしょうか。

私たちは無意識のうちに、まわりの目を気にして物事を選択するクセがついているように思います。とくに女性は、そうなりがち。そのクセを手放し、自分なりのスタイルを確立できれば、精神が自由になるのではないでしょうか。

最近は雑誌などで「モノを捨てよう」という提案も多くみられますが、モノ以前に精神的な縛りを手放さないと、なかなか生き方は変えられません。

50代を迎え、子どもの手が離れつつありますし、これからは自分にとって新しい時間が始まるという気持ちもあります。50代というのは、女性にとって、自分を切り替えるのにいいタイミングだと思います。

先輩方からは60代や70代でもリスタートできると聞いていますが、体力や気力のレベルは人によって違いますよね。でも50代なら、どなたでも無理なく切り替えられるのではないでしょうか。

とはいえ何かきっかけがないと、なかなか難しい。私にとってはそれがグレイヘアでした。劇的な変化を自分に与えるとリスタートできる。新たな一歩を踏み出すためには、過去を引きずっていたらダメ。ポジティブに歳を重ねるための、いわば儀式のようなものだったのかもしれません。

いかに若々しくいられるかではなく、いかに有意義に歳を重ねるか。そちらのほうが大事だと思います