皇室は、恋と家族が結び付いている

しかし、本当にそうなのだろうか。皇室の長い歴史で、初めて恋をしたのは、明仁上皇・美智子妃のカップルなのだろうか。

前近代的な直系家族の「家」が、夫婦中心の「近代家族」に変化したのは、敗戦とそれを契機にした民主化だと、かつては考えられていた。

しかし、過去30年の家族社会学研究は、戦前日本の「家」のなかにも、家庭団欒に重きを置く新しい家族規範が現れていたことを明らかにしている。家族が変わったのは、敗戦後ではなくて、明治期からだと考えられるようになってきた。

そうした研究成果を受けたとき、明治以降の皇室に対する見方も変えなくてはならない。

戦前も、皇室の夫婦の仲睦まじさ、子供の可愛らしさは、実は多く報じられている。皇室はみなが思うほど古くはない。いや、皇室は新しい。

皇室は欧州の王室をモデルに「近代家族」を目指した。この近代性こそ皇室の特徴である。戦前の美子、節子、良子の三人の皇后も、同時代的な感覚では、実は恋をしたのだ。

そのとき問われるのは、恋とは何かである。それは、家族とは何かという別の問いとつながる。皇室は、恋と家族が結び付いているからだ。