生きているありのままを見せる

一方で、BTSはSNSを上手に活用しているという声をよく耳にする。たとえばメンバーが交替で投稿しているツイッターのアカウントを見ると、20年12月の時点でフォロワー数は3100万人超え。自撮り写真付きのメッセージや「歌ってみた」動画など、メンバーを身近に感じられる投稿が多数アップされている。

彼らが20年6月に発信した「私たちは人種差別に反対します。私たちは暴力を非難します。あなた、私、そして私たちは皆、尊重される権利を持っています。私たちは団結します」というメッセージには、90万件超のリツイートと、210万件を超える「いいね」がついた。

「BigHitは、BTSを作った時から『管理するのではなく、彼らが生きているありのままを見せる』という方針でやってきました。だから、SNSも細かな検閲をせず自由に発信させている。フォロワーも、これまでのコントロールされたアイドルとは違う、と感じているはずです」とキムさんは言う。

だがSNSはメリットもある反面、使い方を間違えれば炎上の火種にもなる危険なツールである。BTSにはたまたま、素を見せても問題のないメンバーが揃っていたということなのだろうか?

「いい質問ですね。そこまで信じられるメンバーを得られたBigHitは運が良かった。実際BTSの7人は本当に人柄がいいのです。事務所はタレントに礼儀を教えることはできても、本性を変えることはできません。表舞台での彼らの言動とSNSでつぶやく内容との間にブレがないことを、ファンは見抜いたのだと思います」

そんなBTSを推す人の年齢層は幅広く、最近では韓国でも中高年のファンが増えているという。

「理由として、彼らの曲を聴くと感受性が刺激され、夢見る気持ちや反骨心といった忘れていた感情がよみがえるから。そして欧米や日本など、これまでうらやましく見ていた市場でBTSが愛されていることを誇らしく感じるから、といった2つの要素があると僕は考えています。後者は、スポーツで国家代表がメダルを取った時の気持ちに近いですね(笑)。僕自身は彼らの曲に、ある種の懐かしさ、ノスタルジアを感じています」