30年以上寂聴さんのファンである川上さん。夫婦で参加した法話は、生涯忘れられないものとなったそうです(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは50代の川上さんからのお便り。昨年11月に亡くなった、瀬戸内寂聴さんへの思いを綴っています――。

寂聴さん、ありがとう

2021年11月9日、敬愛する瀬戸内寂聴さんが亡くなった。訃報を聞き、涙が止まらなかった。寂庵のインスタグラムなどの更新が止まり、週刊誌の連載も代筆が続いていたので心配していたが、まさかお亡くなりになるとは思ってもみなかった。日々深い悲しみに暮れている。この5月には100歳のお誕生日を迎えるはずだったのに……。

私が初めて寂聴さんにお会いしたのは20歳のとき。寂聴さんのファンの先輩に誘われて、京都の寂庵を訪れた。まだ法話も写経の会もなく、気軽に写真撮影に応じてくださった。

その後、私もファンになり、初版の『寂聴般若心経』や数々の作品を愛読。苦難にぶつかったときは、寂聴さんの言葉が心の支えとなり、私の人生を応援してくれた。

それから三十数年を経て、法話に参加。今度は夫を連れていった。一番前に座っていたので、私たち夫婦にいろいろとお声をかけてくださった。

そして、以前一緒に撮った写真をお見せすると大変驚かれ、「長い間大切にしてくださって本当にありがとう」と、優しい笑顔と温かいお言葉をくださった。これは生涯忘れられない大切な思い出だ。