骨壺を抱えての半同居にため息
古田康代さん(74歳)は、毎月の「お泊まり同居」を続けているが、心中は複雑だ。
「娘の夫が車で迎えに来てくれ、月の半分を娘一家と過ごします。夫を亡くしたばかりの私を気遣ってくれているんです」
娘の家には古田さんの部屋も用意してあり、将来は一緒に住もうと提案されているという。
「正直なところ、私は自分の家で暮らし続けたいし、同居したくないんです。でも、娘が強めに誘ってくるうえ、私もなんだかんだ頼りにしているのは確かなので、まだ言い出せないまま。今さら一緒に暮らすつもりはないと言えば、娘も傷つくだろうし……」
娘一家は、40代の娘夫婦に大学生の息子と高校生の娘の4人。若い家族とのライフスタイルの違いは、静かに暮らしたい古田さんにとって負担が大きかった。
「突然、『今からみんなでドライブして帰りにバイキングだ』とか『焼肉を食べに行こう』とか決まるのですが、私は『留守番してるね』と断ります。家で自分好みの食事をゆっくりとるほうが、どれだけ楽しいか」
家族全員が集まる夜や週末も、それぞれ自分のスマホを見ているだけで、ろくに会話もない。そんなときふと、なぜ自分がここにいるのかわからなくなる。
「まだ夫の納骨も済んでおらず、行くたびに大事な骨壺を持参して、心身ともにクタクタになって帰宅する。娘たちが良かれと思ってやってくれるのはわかります。だからこそ断りにくいし、ストレスだとは言えなくて」
同居はありがた迷惑という古田さん。次回、行かずに済むような理由をあれこれ考えている。