目の構造(提供:写真AC)

「太陽を見つめてはいけない」視力との関係

網膜には視細胞と呼ばれる細胞がぎっしり並んでいて、その数は片目だけで一億個以上ある。この細胞が光の刺激を信号に変え、神経を通して脳に伝えている。

視細胞には、桿体細胞と錐体細胞の二種類の細胞がある。それぞれ、細胞の形に由来した名前である。「桿」とは「さお」や「棒」の意味で、「錐」は、円錐や四角錐のように、先端が細くなった形のことだ。

桿体細胞はわずかな光でも捉えられるため、主に暗い場所の視力を生み出すが、色は識別しない。一方、錐体細胞は暗い場所では機能しないが、色や形を認識でき、主に明るい場所の視力を生み出す。意外にも、一億個以上ある視細胞のうち9割以上が桿体細胞で、錐体細胞は5パーセント程度だ。

この錐体細胞が中心窩に極めて偏って存在しており、これが明るい場所での視力を生み出しているのである。また、明るい場所の視力は中心窩から鼻側、あるいは耳側に離れるにつれて、急激に低下していく。視野の中心部分でしかはっきりと文字を読めないのは、それが理由である。

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逆にいえば、病気や外傷で中心窩が傷つくと、視力は格段に落ちてしまう。幼い頃から「太陽を見つめてはいけない」とよくいわれるのは、中心窩を傷める恐れがあるためだ。

こうなれば、メガネを使っても決して視力が上がることはない。たとえレンズによって屈折率を変え、網膜表面に像を結べても、それをはっきり認識できないからだ。