「麻酔から覚めなかったら…」は心配ない

以上の理由から、患者が手術室から出てくるときは覚醒状態にあり、昏睡状態に陥っているわけではない。もちろん、麻酔から覚めたばかりのときはややぼんやりしていて、ハキハキと話せる状態ではないが、ほとんどの人は家族からの話しかけに受け答えが可能である。

もちろん、例外もある。心臓などの大きな手術では、手術後も鎮静剤・鎮痛薬が持続的に投与され、人工呼吸器に繋がれたまま手術室から出てきて、そのまま集中治療室に入るのが一般的だ。

この場合は、手術後すぐには意識を戻さず、体の状態が安定した時点で鎮静剤を減量し、苦痛が少ない状態で覚醒させる。そして、自発呼吸が十分にあることを確認した上で気管チューブを抜き、計画的に人工呼吸を中止する。

つまり、この場合も、「やっと目が覚めた!」となるような「一か八かの覚醒」ではない。十分な管理のもとで、「計画された覚醒」が実現されることになるのだ。

なお、全身麻酔手術を受ける人の中には「麻酔から覚めなかったらどうしよう」と不安に思う人も多いのだが、まず心配はない。薬の効果が切れれば、自然に覚醒する。現代の全身麻酔技術は非常に安全である。