内視鏡検査で使用される方法は〈麻酔〉ではなく〈鎮静〉(提供:写真AC)

内視鏡検査で使用するのは「麻酔」ではなく「鎮静」

内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラなど)は、施設によっては眠った状態で受ける方法を提供している。この方法は、全身麻酔ではなく、正確には「鎮静」である(必要に応じて鎮痛薬を投与することもある)。眠ってはいるが、自発呼吸は止まらないため、人工呼吸器は使用しない。こちらは、「眠っている間に終わる」といってもいい処置である。

だが、「鎮静」という言葉は一般には知られておらず、いずれも「麻酔」として漠然と理解している人が多い。実際、「胃カメラを受けたときは“麻酔“をしてもらったので全然覚えていません」というのはよく聞くセリフだ。本当は「麻酔」ではないのだが、その理由を理解するには、全身麻酔との違いから知る必要があるのだ。

むろん、内視鏡検査を行うクリニックのホームページや看板などでも、あえて「麻酔」と書かれていることが多い。ある程度、正確性を失うことはやむを得ず許容した上で、わかりやすさを重視しているのだということが見てとれる。ここに「鎮静」とだけ書いても、見た人にその意味を理解してもらうのはなかなか難しいからだ。

ちなみに、小さな手術を行う際は、全身麻酔ではなく局所麻酔(局所浸潤麻酔)を行うことが多い。局所麻酔は、同じ「麻酔」という言葉を使ってはいるが、全身麻酔とは全く異なる手法である。局所的に麻酔薬を注入することで、その範囲だけの完全な無痛を実現する方法だ。

もちろん意識はある状態で、自分で呼吸もでき、話すこともできる。切り傷を縫う、歯を抜く、といった小さな手術では、意識を失っている必要まではない。狭い範囲だけ、一定時間痛みを取り除くことができれば治療は完結するのだ。