(イラスト:mappy)
ある日突然、配偶者が意識を失ったり、死亡したらどうなるでしょうか? 心臓突然死でいえば、1年間で7.9万人が死亡。1日約200人、7分に1人が亡くなる計算です。突然死しなかった場合でも、脳血管障害などで意思表示ができなくなることも。通帳や印鑑の場所、暗証番号などがわからなくなり、預金が引き出せず、日々の支払いが滞ってしまうケースがあるのです。沼田さえ子さん(自営業・64歳)の場合は、朝起こそうとすると夫が意識を失っていました。夫の母と弟は心配するどころか、これを機会にお金をかすめ取ろうとしたのです。沼田さんは療養中の夫のために決断をします。

布団をめくると失禁した夫が

ある日のこと。いつものように夫へ「朝だよ。起きて」と声をかけたが、起きる気配がない。後でまた起こそうと台所に戻りかけたが、「あれ?」と胸騒ぎを覚えた。もう一度声をかけ、肩を叩いても夫は目を開けない。布団をめくってみると、なんと失禁しているではないか。

すぐさま救急車を呼んで病院に向かうと、医師から「脳圧を下げるために開頭手術をします」と説明され、眠ったままの夫は手術室へ連れて行かれてしまった。

動転しながらも、近くに住む86歳になる姑に電話をかけたところ、「また酔っぱらって転んだんでしょ」と言って取り合わない。

私は「酔って転んで頭を強く打ったみたいで。脳圧を下げるために開頭手術をしています」と食い下がったが、慌てる様子もなく「まあ」と言って少し黙り、手術が終わったら連絡してちょうだいと電話を切られてしまった。

わが子の意識がなく、ましてや開頭手術となったら親はすぐに駆けつけるものだと思っていた私は、姑の冷めた反応に茫然とした。

病院に駆けつけた娘たちの顔を見て少し気持ちが落ち着いたのも束の間、術後に主治医から「頭蓋骨の一部を外しました。脳を保護するため体温を下げる処置をしていますが、命の保証はありません。植物状態になることも考えられます」と説明を受けた。

これは大変なことになったと、再び姑に電話をかけるも、「明日、次男が東京から来るから、もう一度話を聞かせてほしいと先生に頼んでおいて。三男も一緒に行くから」と言うではないか。

一刻を争う状況なのに、なぜ息子の顔を見に今すぐ来ないのかと、怒りを通り越して唖然という言葉しか出てこない。