「現場監督」を育てる

今回が一番、甲斐(拓也)は自分がやらなければ、という強い気持ちを持って臨んでくれていると感じました。プレミア12で共に戦い、東京五輪でも当初メンバーに入っていた會澤翼がケガをしたこともあり、責任感と強い気持ちを持って、五輪に入ってくれたという感じがします。

2017年のアジア プロ野球チャンピオンシップから、ずっと招集していました。今は12球団の中に、1人で1試合を守り切るキャッチャーはなかなかいませんが、甲斐はソフトバンクの正捕手として日本シリーズに何度も出場しており、短期決戦の経験を積んでいました。

彼のブロッキングと肩は、相手チームからしたら脅威だと思います。結局、盗塁はされませんでした。

もちろん日本の投手陣のクイックも上手ですから、バッテリーとしての抑止力は大きかったと思います。投手陣ともよくコミュニケーションを取り、引っ張ってくれました。建山コーチは「インコースの使い方が完璧だった。MVPをあげたいくらいの活躍だった」と褒めていました。

打力も年を追うごとに向上して、振りが強くなってきましたし、無茶なスイングをあまりしなくなりました。うまく一、二塁間に打ちますし、勝負強くなってきました。

今大会は9番で好機を作って上位に回してくれましたので、チームの得点力も上がりました。全ての状態がいい時に、ちょうど五輪が巡ってきたのではないかと思います。

4年間をかけて私が目指す野球を理解し、グラウンド上でそれを体現してくれる、甲斐のような「現場監督」がいたのも、とても心強いことでした。

○日本 2 ― 0 米国