選手として出場することと監督として戦うことの違い
大会中に、メディアの方から「選手として出場した北京五輪と、監督として戦った東京五輪はどう違うか」と聞かれました。
もちろん、選手と監督という立場は大きく違うと思います。監督という立場はやはり、チームをどうやって勝ちにつなげていくか、野手のことも投手のことも色々なことを考えて臨まないといけません。その中で選手たちをどうやって一つにまとめて、どうやって普段通りのプレーをしてもらえるかということを、すごく私自身も考えながら臨んでいました。
試合をしていくと、北京五輪の時の星野監督の気持ちが分かりました。
北京五輪では、監督とコーチが合わせて4人しかいなかったので、色々なことを見なければいけない、決めなければいけないという状況で、非常に苦労されたのだろうと思います。
現役時代と監督として戦った東京五輪と、日本代表を背負う重みに、違いは感じていません。全く同じです。北京の時もWBCもプレミア12も、「日本代表」チームとして戦う思いはどれも変わりません。
東京五輪では、日本の野球、そして強さを見せたいという思いがありました。選手の頑張りによって勝ち取った金メダルが一つのきっかけとなり、野球を始めてくれる人が増え、競技の人気が高まれば、一人の野球人として幸せに感じます。
『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(著:稲葉篤紀/中央公論新社)
2021年に開催された東京オリンピックで、野球日本代表が37年ぶりの金メダルを獲得した。五輪監督を務めた氏は、就任以来どのように侍ジャパンのチーム作りに取り組んできたのか。その舞台裏や秘蔵エピソードを明かす。