巨大な禿鷹がプロメテウスの肝臓を啄む場面を描いたルーベンス「縛られたプロメテウス」(‘Prometheus Boun’, by Peter Paul Rubens.image via Philadelphia Museum of Art

人類は「肝臓が再生する」ことを案外古くから知っていた

ただ、人類は「肝臓が再生する」という事実を、案外古くから知っていたのではないかといわれています。なぜなら、ギリシア神話に肝臓の再生を思わせる言い伝えがあるからです。それは次のようなものです。

「先見の明」があるプロメテウスは、人間に火を与えようとしました。しかし、このことがゼウスの怒りを買うことになります。

プロメテウスは捕らえられ、コーカサスの山の頂に鎖でつながれます。そして夜になると、巨大な禿鷹がプロメテウスのお腹の肝臓を啄んでいきます。太陽が昇ると禿鷹は去りますが、また夜になると現れます。

啄まれた肝臓は、日中のあいだに再生するので、プロメテウスの苦しみは永遠に続く――というお話です。

プロメテウスが囚われ、山の頂で肝臓を啄まれるという話は、ヨーロッパの古代の遺物や近代の絵画や彫刻のモチーフとしてしばしば用いられています。

なぜ古代ギリシアの人たちが「肝臓が再生する」という事実を知っていたのかは不明ですが、もしかしたら生贄の肝臓の観察から、そのことを知るようになったのかもしれません。