実例から知る認知症の進行と介護費用

認知症の親族の相談は、やはり介護費用や介護期間に関することが多いです。

弊社団の相談者の実例でいえば、施設の利用料は首都圏では平均的に20万円程度ですが、マイホームをキープしたままだと生活費を含めて毎月約30万円の出費が平均です。

認知症の実態と介護費用の実例を紹介しましょう。

弊社団に最初に相談があったときのAさんは、歩行がおぼつかない程度でしたが、介護認定を受けていました。当然、十分に意志確認ができました。相談依頼は、Aさんの娘のBさんからで、資産は何年持つか、というものでした。

当時の現金資産は約2,800万円、その時点で年間250万円の生活費と介護関連の費用が発生していました。ただAさんは地方在住で、いずれは首都圏のB子さんの近くの施設に入る希望を持っていました。調べた結果、首都圏の施設費用は地方より高くなることが判明、2,800万円だと心もとないことも判明しました。

Aさんはマイホームを持っていたので、意志確認ができる状態の時に不動産売却ができるように、弁護士や税理士、不動産会社が相談に応じ、その地域は土地の価格が下がることも予測されることから売却を勧めました。BさんもAさんに勧めてくれましたが、あまり乗り気ではありませんでした。

ただ、名義をBさんに変更することには同意してくれたので、一連の手続きを完了。
今は、登記の名義人本人の判断能力に疑わしさがあったり、認知症とわかると、
不動産売却が難しくなるからです。

3ヵ月後、歩行は困難になったAさんが、Bさんの近くの施設に入居することになりました。それから3年が経過。穏やかで上品だったAさんは錯乱するようになり、精神病院に入所しました。

ただ、その場合も施設費用を払わなければなりません。病院代と施設の部屋代の両方の費用が必要です。Aさんの現金資産は2,800万円から1,000万円と1,800万円も減りました。Bさんからは、感謝されたことは言うまでもありません。