A型からE型までの肝炎ウイルスまとめ

最後に、一通り紹介の済んだ、A型からE型までの肝炎ウイルスについて簡単にまとめます。

肝炎ウイルスの種類と特徴(図:『肝臓のはなし-基礎知識から病への対処まで』)

一口に肝炎ウイルスといっても、実はウイルス学的には、すべて種類の異なるウイルスたちです。まったく共通性のないウイルスにもかかわらず、(1)主に肝細胞に感染し増殖すること、(2)肝炎という共通の病態を起こすこと、この2点において共通性を示すことから、「肝炎ウイルス」というひとつのカテゴリーに分類されているのです。

A型とE型は、「流行性肝炎」の原因になるウイルスで、急性肝炎を起こします。慢性肝炎になることはありません。ともにウイルスに汚染された水や飲食を介して感染するウイルスで、A型は魚介類、E型は食肉(シカやイノシシ)を介して感染することがあります。

B型とC型は「血清肝炎」の原因になるウイルスで、体液や血液を介して感染します。C型は、汚染された血液を介した医療行為の影響で、近代になって急速に拡大しましたが、B型はその経路とともに、母から子へ出産時にウイルスが伝わることと、幼小児期の感染も重要です。

B型の場合、大人になってからの感染は急性肝炎になることが多いのですが、子供のときに感染すると、先ほど説明した「キャリア」になりやすいからです。

D型は日本では稀ですが、先述のとおり、B型と一緒に感染して病状を悪化させる「ウイルスに似た」病原体です。

感染予防という観点からは、A型とB型に対しては、ワクチンが開発されています。B型のワクチンは、1986年から母子感染の予防目的に導入され、2016年からは小児に対して定期接種化されています。

※本稿は、『肝臓のはなし-基礎知識から病への対処まで』(中公新書)の一部を再編集したものです。


肝臓のはなし-基礎知識から病への対処まで』(中公新書)

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