離婚すれば、幸せなのかな
でも加トちゃんは、ほとんどいつもどおり。一度だけ、わたしが部屋の隅で、背中を丸めて憔悴しきった表情でブログのコメントを読み漁っていると、「もう見なくていい!」と、声を荒らげてケータイを取り上げたことがありました。が、それくらいです。
わたしが落ち込んでいても、加トちゃんはいつもと同じようにテレビを観ながら声を出して笑って、いつもの生活を続けていました。
「わたしがこんな状態なのに、普通でいられるなんて、ひどい」
「加トちゃんがいなければ、離婚すれば、幸せなのかな」
被害者意識が全身を支配して、そんなとんでもないことが頭をよぎったこともあります。
転機は、突然訪れました。買い物に行こうと駐輪場に行くと、わたしの自転車がありません。ふと、頭上で見覚えのあるシルエットがちらっと見えて。そこにはボコボコに壊されたわたしの自転車が、木の幹に吊るされ揺れていました。
「このままじゃダメだ。このままこれに飲み込まれたら、わたしはきっと死んでしまう」
強くなるしかない。乗り越えるしかない。
絶望のどん底まで落ちきっていたわたしは、立ち上がって前に歩き始めるしか、生き残るための手段が残されていなかったのです。