ロシアの論理は国際的にも認められない

Q:ウクライナでは歴代大統領がNATOへの加盟を表明してきましたが、実現には至っておりません。ロシアからの反発も大きかったようですが――

ウクライナの首都キーウ(写真提供:PhotoAC)

A:ウクライナは、ロシアに従属しロシア式のやり方をとっているようでは真の独立は得られず、また経済の発展も望めないと確信するようになりました。しかしプーチンは、ウクライナ国内でのそのような動きを許すことができなくなっていました。

このような状況で、大きな事件が起こります。2014年、ロシアによってクリミアが併合され、東部ドンバス地域でロシアの傀儡政権が擁立されました。

これがあまりにも簡単に進み、欧米の反発・制裁もそれほど大きくなかったことから、プーチンは第2段階としてNATO加盟を推進するゼレンスキー政権を倒して傀儡政権を作り、ウクライナを自分の意のままに従う国にしようとしたのだと思います。その結果が、2022年2月24日の軍事侵攻でした。

プーチンにとって目下の課題は、NATOがこれ以上東方に拡大してロシアの脅威になることを防ぐことでした。そしてゆくゆくは、ロシアがかつてのロシア帝国やソ連のように広大な領土を持つ大国に復帰することを、自分の手で成し遂げたい、そう考えたのだと思います。

Q:プーチンは、ウクライナ侵攻を正当化する論理として、「ウクライナとロシアは歴史的に一体だった」と主張しています。しかし、黒川さんが『物語 ウクライナの歴史』で書かれているように、ウクライナ民族や国家の成り立ちをひもとくと、プーチンの主張は事実ではないことがわかります。彼はなぜあのような主張を繰り返すのでしょうか。

A: ロシアが長いあいだウクライナを支配してきたため、ロシア人、特にプーチンは、ウクライナはロシアの一部だと考えたり、あるいはウクライナは当然ロシアに従うものだ、と考えるようになったのだと思います。

他方でウクライナ人は、自分たちはロシアとは民族・言語・宗教などで近い関係にあるが、別の民族であり、ロシアには従いたくない、と考えています。

もちろん、現在の民族自決の原理からすれば、ロシアの論理は身勝手であり、国際的に認められるものではありません。