ISSで実験に使っているかいわれ大根を手にした向井さん

向井 アポロ11号で月に到達しているアメリカにしてみれば、外国の宇宙飛行士を「なんで俺たちのシャトルに乗せなきゃいけないんだ」って感覚もあったでしょうし(笑)。カナダやヨーロッパの1期生たちも一緒に肩身の狭い思いをしながら、「何くそっ!」という気持ちで切磋琢磨していましたよ。

酒井 そんなことがあったとは!

向井 でもマイノリティって、決して悪いことばかりじゃなくてね。土も水もないような岩の隙間から懸命に伸びる木が強いように、厳しい環境を耐え忍んだり、はね返したからこそ生まれる強さもあると思う。私は女性であり、宇宙開発途上国出身というマイノリティだったからこそ、1期生として頑張れたという気もするんです。

酒井 これまでは理系の宇宙飛行士を求めていたJAXAですが、今回は学歴を問わず、実務経験の分野も指定されておらずと、幅広い層が応募できるようです。それには理由があるのでしょうか。

向井 世界では今、さまざまな分野でダイバーシティ(多様性)が求められています。それは「マイノリティも受け入れましょう」という理念上の問題だけではなく、結局、ダイバーシティを実現した組織が「強い」からなんですよ。

単一性の高い組織では、何か問題が起きた時に同じような解決策しか思い浮かばず、フレキシブルな対応ができない可能性が高い。その点、いろんな人の観点や経験から「こうも考えられない?」とディスカッションできる環境にしていくことは、結果的に360度の視野を手に入れることになるわけです。

酒井 文系の人も役に立てるかもと、希望が湧いてきました。(笑)