「すべてを否定するほうが、ある意味で楽かもしれません。でもそれでは、私たちが理想としている世界、望んでいる大きな平和に近づくのは難しいのではないでしょうか。」

ウクライナ語を身近に感じてもらいたい

音楽活動以外にも、ウクライナのことをもっと日本の人に知ってもらいたいと思って、ツイッターでウクライナ語を紹介する「勝手にウクライナ語会話」を始めました。

ご存じの方もいるかもしれませんが、ウクライナ語はロシア語と似ていますし、ウクライナではロシア語も通じます。そのため、以前からコンサートでも、ロシア語で「ありがとう」を意味する「スパシーバ」という言葉をかけてくださる日本人もけっこういました。

「スパシーバ」もいいけれど、ウクライナ語でありがとうを意味する「デャークユ(Дякую)」も覚えてもらえたらいいな、と思います。この先、日本にもウクライナからたくさんの人が来るでしょう。心細い中、もしひとことでもウクライナ語で話しかけてもらえたら、どれほど嬉しいか……。ほんの少しでもそのお手伝いができたらと考えて、「勝手にウクライナ語会話」を始めたのです。

一方で私は、戦争が起きたからといってその国の文化やそこで暮らす人々まですべて否定してしまうのは、よくないと思うのです。

ロシア語にも、日本人に親しみのあるロシア民謡やロシアの音楽、ロシア文学にも罪があるとは思えません。今回のことでそういったものまで否定してしまうのは、新たな憎しみを生むことにしかならないですから。

すべてを否定するほうが、ある意味で楽かもしれません。でもそれでは、私たちが理想としている世界、望んでいる大きな平和に近づくのは難しいのではないでしょうか。互いに思いやりを持ち、場合によっては相手の立場で考えるなど、想像力を働かせて行動し発言することが大事だと思います。