音楽で希望を生み出して

幸いなことに私は、音楽と出会うことができました。8歳のときにウクライナの民族楽器バンドゥーラと出会い、その翌年に子ども民族音楽団に入団しました。

それまですごくつらい気持ちだったのに、うまくは弾けないけれど楽器を触ってちょっと弾いただけで心が楽になり、何か温かいものがすーっと心に流れてきた気がして。さっきまでの気持ちはどこにいったんだろう。そう思うくらい楽になったのを実感したときに、涙が止まらなくなりました。

幼かったけれど、そのとき心に感じた温かさは今も忘れられないし、今でもつらくなったときに、あの日のことを思い出します。温かいものを心に感じられる何かに出会えるかどうかで、人生が左右されると実感しています。その後、縁あって、00年以降は日本を拠点にして音楽活動を続けています。

私が演奏しているバンドゥーラという楽器は、もともとはコブザーリと呼ばれる盲目の演奏者が、村から村へと回って演奏していたコブザという楽器が進化したものです。旅をしながら、政治のことや自分たちの思いを歌に乗せ、人々に伝えてきたのです。

民族楽器なので若者には人気がありませんでしたが、ここ数年、若い人がポップスやロックにバンドゥーラを取り入れています。特にクリミア危機があった14年頃から愛国心が高まり、若い人たちの中でもバンドゥーラを弾いたりウクライナ語で歌うことがかっこいいと思われるようになって。

ウクライナの人たちは音楽が大好きで、常に大地に音楽があふれています。どれだけ大変なときも、音楽が人々の心を救い、力と希望を与えてきました。ニュースでも、シェルターに避難している人たちが歌っているのを見て、ほんの少しだけほっとしました。音楽で希望を生み出そうとするのは、やっぱりウクライナ人だなと感じます。