精神的にも経済的にも追いつめられ

私が毎日のように連絡を取っている友人は、母親がチェルノブイリ原発事故で避難生活を経験していて、「もう二度と逃げるのは嫌だ、それはできない」と言うので、国を出られない状況がずっと続いていました。

最終的には母親を残してポーランドまで避難しましたが、それ以上遠くに行ってしまうと、すぐに母親のところに帰れなくなってしまう。もちろん、簡単に戻ることができる状況でもありません。どうしたらいいのかと、友人はとても不安そうでした。また、夫が兵士として戦っているから、自分と子どもだけが国を出ることはできないという人もいます。

あるいは、地域で自分たちを守ってくれる男たち――それは夫だったり、息子やきょうだい、全然知らない人たちだったりもしますが――彼らのために食料や洋服などの物資を集め、料理や洗濯をしている友人もいます。

今、ウクライナ国内のほとんどの人たちは仕事ができず、無収入です。友人たちは自分の蓄えを全部出し切った状態で支え続けている。そのためにはお金が必要で、私も個人的に彼らを支援しています。

現地の人たちが、精神的にも経済的にもどれだけ追いつめられているか。想像もつかないけれど、自分よりはるかにつらいでしょう。

悲しみは消えませんが、音楽と共に生きている者として、苦しんでいるウクライナ人のために音楽を通してできることを探したい。徐々にそう思うようになりました。私にとって音楽は、つらいことを乗り越える力を与えてくれる存在なのです。