(写真提供◎photo AC)
災害や事故、介護や相続など、人生には不測のトラブルや、避けられない困難が訪れます。とはいえ、気軽に聞ける弁護士や税理士が身近にいるとは限りません。専門的な知識を得ることで、冷静な判断で被害を減らしたり、計画的に備えたりすることができます。ジャーナリストとして長年さまざまな現場を取材しているファイナンシャルプランナーの鬼塚眞子さんに、暮らしに役立つ豆知識を聞きました。第17回は「老後の就業と年金について」です。

前回 「『介護認定の日、親が調査員の前で頑張りすぎて、思うような結果が得られない…』介護認定で失敗しないために」はこちら

目次
定年退職後も働く人が増えている
退職金の金額と使い道
シニアの再就職事情
シニアの仕事選びの注意点
【実例】戸建てからマンションに住み替え、Wワークで気持ちに余裕
【実例】定年後は寒暖差も少なく、仕事もある沖縄に移住
仕事を続けると年金受給額は減る?

定年退職後も働く人が増えている

人生100年時代、老後をどう生きるかは若い世代にとっても大きな関心事になっています。定年退職したら悠々自適に過ごす人が多かった以前とは違い、定年退職後も働く人が増えています。

70代以上で働いている男女20人に、定年退職後も働く理由を聞いてみると、「人生100年というなら60歳からは40年もある。今まで社会人として働いていた以上の歳月となる。そうなると今の貯金や年金だけでは不安だから」「元気でいる限り働きたい」といった声が圧倒的でした。

 

退職金の金額と使い道

退職金の平均額はいくらなのか、非常に気になりませんか?

厚労省では退職金の支給実態を発表しています(PDF)。この調査によると、大学・大学院卒の平均退職金は1,983万円、高校卒では1,159~1,613万円。ただし、この金額は退職金制度のある企業が対象のものですから、そもそも退職金制度がない、という会社は平均値に含まれていません。

【表】平成29年退職者一人平均退職給付額(※図をクリックで拡大)

筆者が調査した中では、退職金の最高額は一部上場企業に勤務した勤続33年の男性で、早期退職制度に応募して手にした退職金が3,000万円でした。一方、最低額は50万円で、従業員数人の町工場に中学卒業から45年間勤務したものの、不況の影響もあってその金額しかもらえなかったということでした。

居住地域や会社規模。キャリアによっても退職金は変わってきますが、首都圏でも大卒で1,500万円前後という例が多かったです。

退職金で住宅ローンなどの精算をした人、一部を夫婦で旅行費用にあて、あとは老後の生活のために貯金し、切り崩している人もいます。かと思えば、退職金を元手にして財産を増やすために、金融機関に通って知識を付け、株式投資などに熱心な人もいます。

退職金をどう使うか、増やすかは大きな命題です。自分らしい老後を過すためには、自己判断ではなく、金融機関やFPに相談してみてください。また納得のいく選択のために、子どもに同席してもらったり、複数の金融機関やFPに相談したりして、さまざまな角度から考察してみることは大切です。